(photo by kelly reeves)
前項では、浪人のあり方として、予備校に通うことの他に自宅浪人という方法があるということをお話しました。
本項では、自宅浪人にはどのようなメリットがあるのか、7つの項目に分けて説明していきます。
メリット1:時間が大量に確保できる
自宅浪人は、勉強のためにどこかに移動する必要がありません。ですから身支度もいらず、起きてから寝るまで、すべての時間を有効に使うことができるのです。
時間がたっぷりあれば、休憩に割り振れる時間も増えます。
つまり、勉強時間をしっかり確保した上で、たくさん休憩することも可能なわけです。
身支度や移動のために時間を使ってはこうはいきません。勉強時間か休憩時間、どちらかを削らなければならなくなります。
浪人生にとって時間は貴重なもの。二十四時間を自分の好きなように丸ごとたっぷり使えるのは、自宅浪人の大きなメリットです。
メリット2:お金がかからない
「お金がかからない」というのは、自宅浪人の最大のメリットともいえるポイントです。予備校に通えば一年で50万円から80万円ほどもかかってしまう授業料。これが、自宅浪人の場合、かかるのは問題集の実費だけですからたった数万円でおさまってしまいます。
実際、私が一年間の自宅浪人生活で新たに買った問題集の代金は、浪人が終わったときに計算してみたところ合計三万円にも届いていませんでした。
なぜそんなに安いのか? それは、問題集一冊が安いからです。
たとえば、この日栄社の英語の問題集。
↑こちら、30日分、65ページあって、解説もついて、一冊あたり税込306円です。
このくらいの価格の問題集であれば、三万円もあれば百冊近く買える計算になります。
もちろんもっと値の張る問題集もありますが、それでも一冊1000円~2000円程度に収まるものがほとんどでしょう。
↑たとえばリスニング用のCDがついたこちらの英語教材(Z会)は、税込2052円。
このように、一冊300円~2000円程度の問題集を必要な分だけ買って使うことで、出費が低く抑えられるのです。
メリット3:勉強内容(難易度、時間配分)を科目ごとに自由に決められる
得意科目と不得意科目がはっきり分かれている場合、勉強内容に緩急をつける必要があります。
たとえば私は、受験する五教科の中でも、英語と国語が得意で、数学がかなり不得意でした。
英・国をより伸ばし、数学を底上げするために、私は、英・国は応用的な問題集をガツガツ、数学は教科書からじっくりやることにしました。
そして、一日の中でも数学に割く時間を多く取り、英語や国語は隙間を埋めるように短時間集中で勉強するようにしました。
上述のように自分の学力に合わせた勉強をしたおかげで、センター試験では数学はIAが100点満点中91点、英語と国語はそれぞれ200点満点中196点(98%)、186点(93%)を取ることができました。
このように、自宅浪人では、各科目の習熟度に応じて勉強内容や時間配分を自由に決められるので、無駄なく、適切に学力を伸ばしていけます。
メリット4:音が出せる
たとえば英単語などを暗記するとき、何度も書き取りをするだけでなく、声に出して読み、耳で聞くことでより深い定着を図れます。
自宅浪人では周りに人がおらず、音を出しても良いため、好きなだけ音読を用いた勉強法を実践できます。
これは、受験勉強を進める上で大きな強みとなります。
また、休憩時間に、リフレッシュやストレス発散のため音楽をかけ大声で歌うことができるのも魅力です。
メリット5:わずらわしい人間関係がない
社会生活には人間関係がつきもの。人付き合いがあるおかげで楽しい思い出ができるのも事実ですが、うまくやっていくためにストレスを感じることもあるでしょう。
ときにはその人間関係がこじれ、勉強どころではなくなる場合も……。
受験勉強に集中したい時期の人間にとって、これらの「勉強以外の要素」というのは本当にやっかいです。
そんなものに心砕かず、自分のペースを守って勉強できる人なら問題ないのです。しかし、私にはそれができませんでした。
高校三年間、最後の最後まで、人間関係に振り回されてしまいました。
ですから、自宅浪人生活に入り、生活に静寂を取り戻したときは解放感に喜びを覚えたものです。
これでやっと、勉強だけに集中できると思いました。
そして実際、自宅浪人生活というのは勉強するのに最適の環境でした。
人の目のないところでのびのびと、自分のやりたいように好きなだけ勉強ができるのも、自宅浪人の良さの一つです。
メリット6:自己管理能力が身につく
これは、私が今に至るまで恩恵を受けていることなのですが、自宅浪人という経験を経ると、自己管理能力が身につきます。
なにせ、一年後の再受験に向けて、自分が成すべきことを把握し、それを達成するための計画を自分で立て実行していくのです。
何の強制もありません。誰も指示してくれませんし、怠けても叱ってくれる人はいません。
そんな中で、自己を律し、内面の弱さや不安と闘いながら、一歩ずつ、自分が立てた目標に向かって勉強していくのです。
一人で頑張らなければいけない自宅浪人生は、味わう苦難と引き替えに、その後の人生を自分で切り開いていくのに必要な強い精神力を身につけるのです。
この宝のありがたみは、浪人生活を終えてからこそしみじみと感じることが多いでしょう。
怠け心を抑え、自分を奮い立たせて頑張れるようになるので、人生の大事な局面で踏ん張りがきくようになります。
メリット7:自信がつく
自宅浪人では、わからないからといってすぐ誰かに聞くことはできません。誰かが勉強の計画を立ててくれるわけでもないですし、教材を用意してくれる人もいません。
だからこそ、自分だけで頑張って大学合格を手にしたとき、その手柄を自分のものにできます。
この合格は、自分の努力の賜物なのだと胸を張れます。
これが、どれだけ誇らしく、気持ちの良いものか。
傷だらけになっても、めげそうになっても、歯を食いしばって一人で悪路を登り続け、ついに合格を手にした自分がどれだけカッコイイか。
自分が自分のヒーローとなります。
相当な成功体験となり、自信がつきます。
確かに自宅浪人とは生やさしいものではないかもしれません。しかし、それゆえに、乗り越えたときの成長っぷりはすさまじいものがあるのです。
社会人になって、厳しい状況に立たされても、「自宅浪人を乗り越えた自分なんだから大丈夫、きっとできる」と思えます。
自宅浪人を経た人はその後の人生においても、苦境に立たされたときに心折れずに自分を信じることができるのです。
自宅浪人のもたらす強さが人生にプラス
以上見てきたように、自宅浪人には多くのメリットがあります。
受験勉強に直接プラスになるようなメリットに加え、精神面を鍛えてくれるというメリットがあるという点も見逃せません。
なにせ、受験を乗り越え、大学を卒業したあとも、人生は続くのです。
その長い人生を、自宅浪人という経験がもたらした強さが支えてくれるのだと思えば、自宅浪人というのは積極的に選ぶに値する選択肢だというのがわかります。
次項、「自宅浪人生のタイムスケジュール(一例)」として、自宅浪人時の私の平均的タイムスケジュールをご紹介します。